分科会について(9月24日(日))

午前(9:30~12:30)


第1分科会:資料保存 「資料保存技術の継承と伝達」

 近年、電子化が進行しているとはいえ、まだまだ図書館における紙媒体の占める割合は多く、破損・劣化した資料の修理・補修の必要性は依然として高い。しかし、ベテラン職員の退職や職員数の減少により、必ずしも資料保存の技術が職場内で継承されているとは言い難く、職場内でノウハウが途絶えた場合、修理業務が後回しになり、結果として資料提供に支障をきたすことになる。破損・劣化した資料があっても、対応方法が分からず、そのまま放置しているとの悩みを聞くこともある。
 本分科会では、参加者からの事例紹介と意見交換を行い、いかに資料保存技術を継承していくかだけでなく、互いの技術や知識をどの様に共有していけるかについても考える場としたい。

担当:
山上 朋宏(奈良女子大学学術情報センター)
北川 正路(東京慈恵会医科大学 国際交流センター)


第2分科会:キャリア形成 「大学図書館員と研究活動―社会人大学院生の学びとキャリア―」

 大学図書館研究会をはじめとして、図書館業界には業界の雑誌が数多くあり、それらの雑誌に論文や文章を投稿された経験がある方も多いのではないしょうか。今年のキャリア形成分科会では、論文の執筆をはじめとした研究活動について、実際に大学図書館で勤務しつつ、社会人大学院生として研究活動にも携わってこられた方の経験を踏まえて、大学図書館員のキャリア形成としての研究活動について講演とディスカッションを行います。
 分科会での前半では、大学院進学経験のある方に、大学院での学びや研究活動がキャリア形成に及ぼした影響、社会人院生になってよかったことや大変だったことなどをお話しいただきます。会の後半では、前半のお話をもとに、参加者全員で質疑応答や意見交換などを行います。
 大学院進学に興味がある方だけではなく、研究活動に興味がある方、実際に研究をされている方、雑誌に論文を投稿してみたい方、研究活動の体験を聞きたい方など幅広い方の参加をお待ちしております。

担当:
中川 恵理子(金沢学院大学)
有馬 良一(神戸大学)


第3分科会:出版・流通 「学術コミュニケーション入門:大学図書館員が知っておきたいこと」

 学術コミュニケーションは大学図書館員にとり日々深く関わっているものであるにも関わらず、その範囲の広さや複雑さ、変化の多さから、きちんと理解が追い付いていないことが多い。そこで本分科会では2022年に邦訳が出版された『学術コミュニケーション入門 : 知っているようで知らない128の疑問』1) の読書会を行い、学術コミュニケーションに関し大学図書館員として必要な基礎知識について理解を深めることを目指す。
 分科会は対面式で行う。本書の訳者である学術コミュニケーションコンサルタントの宮入暢子氏にもご参加いただき、参加者が関心をもつトピックを中心に読み進め、問題点や疑問点についての意見交換を予定している。参加にあたっては事前に本書を読み、事前アンケートへの回答とコメントや疑問点の準備をお願いしたい。
1) リック・アンダーソン著. 宮入暢子訳. 学術コミュニケーション入門: 知っているようで知らない128の疑問. アドスリー, 2022.

分科会に参加される方へ(7月17日追記)
事前アンケートにご協力ください。
全14章あるテキストの中から、特に参加者の関心が高いトピックを把握し、適切な時間配分をおこなうためのアンケートです。
第一次締切:8月17日(木)
締切後のアンケートも分科会の参考にいたします。

担当:
楫 幸子(安田女子大学図書館)
吉田 弥生(大阪大学附属図書館)


午後(14:00~17:00)


第4分科会:大学図書館史 「大学図書館問題研究会の歴史を見るPart7」

 今回の大学図書館史分科会は,大図研創立50周年を契機とした連続企画として,昨年に続き1970年に成立した大学図書館問題研究会の歴史を主題とする。今回は主に2011年から2023年現在までを取り上げる。大図研と大学図書館界の歩みについて,同時代史としての参加者個人の経験も共有しつつ,会報『大学の図書館』を主な史料として振り返ることとしたい。
 大学図書館史に関心を有する方やこれまでの歴史から現在を捉え直したい方などの参加を期待しており,大学図書館史を学び合う機会としたい。

担当:
加藤 晃一(千葉大学附属図書館)
小山 荘太郎(横浜国立大学附属図書館)



第5分科会:利用者支援 「所属機関を超えた利用者支援  ~図書館に「市民科学」を応用した事例について~」

 市民科学(シチズン・サイエンス)とは、科学者でないアマチュアの市民が集い科学活動に参加する活動のことである。例えば動植物の生態や天体現象について色々な場所に住む市民による定点観測が挙げられる。
 この分科会では、「市民科学」を図書館に応用した事例として、所属機関が異なる参加者が共同で作業を行い、その成果をも不特定多数に公開した活動について取り上げ、企画・運営側と参加者の双方から発表する。
 図書館における利用者支援は、来館型・非来館型問わず基本的には「その機関が提供する、主として自館の利用者を対象とした支援」という文脈が暗黙の中に含まれていると思われる。だが、この分科会では提供する側・される側ともに特定の組織や機関にとらわれない事例を取り上げ、新たな利用者支援のあり方を模索する。

担当:
下山 朋幸
德田 恵里 (株式会社紀伊國屋書店関西ライブラリーサービス部)
小林 泰名(北海道大学附属図書館)


第6分科会:学術情報基盤 「データクレンジングのはじめ方」

 図書の書誌データや所蔵データ、リポジトリに搭載する論文のメタデータなど、図書館員は様々なデータに囲まれて仕事をしている。しかし、これらのデータの品質は一定ではなく、表記揺れや重複・抜けなど、さまざまな誤りが存在している。このような誤りがあると、利用者が必要とする情報にたどり着けなくなるため、データの誤りを修正する「データクレンジング」の作業が必要になるが、修正対象のデータを発見し、1件1件個別に修正・登録していくのは、時間がかかる作業でもある。本分科会では「データクレンジングのはじめ方」として、効率よくデータの一括登録や一括修正を行う方法を話題として取り上げる。分科会内ではデータクレンジングの実習を行う予定であり、参加される際は、ネットワーク環境があるノートPCと、修正対象の書誌データをご持参いただきたい。

担当:
田辺 浩介(物質・材料研究機構)
柿原 友紀(熊本大学附属図書館)