分科会について

9月14日(日)9:30~12:00


第1分科会:資料保存 「これからのカビ害対策を考える」

 資料の燻蒸ガスとして広く使われてきたエキヒュームSの販売が2025年3月に終了した。関東地域には殺カビ効果のある別の燻蒸ガスを扱う業者も存在するが、取扱い可能な業者や地域が限られることから、燻蒸による殺カビ処理という手段は今後取りづらくなるだろう。そのため、これからのカビ害対策としては、文化財IPMの考え方に基づく生物被害対策(温湿度管理と清掃などによる予防)がますます重要になると考えられる。しかし一方で、限られた人員での対応に困難を感じている担当者も多いのではないだろうか。本分科会では、参加者の所属館での課題や事例、知見を共有し合いながら、生物被害対策を実践していくために具体的にどうしていけばよいかを一緒に考える機会としたい。

担当:
和知  剛(安来市立やすぎ図書館)
吉田 弥生(大阪大学附属図書館)


第2分科会:学術情報基盤 「小規模機関リポジトリの効率的な運用を探る」

 科研費等による研究成果の即時オープンアクセスが2025年度新規公募分から義務化されることへの対応は、多くの機関で課題となっている。機関リポジトリに紀要論文を中心に登録してきた機関は、新たに国内外の学術雑誌に掲載された論文を収録することが求められる。その際、出版社の著作権ポリシーの確認や、研究データの登録など新たな業務に直面することが予想される。一方、研修などで取り上げられる海外の事例や、高度な知識やシステム改修が前提となるような事例は、ハードルが高いと感じる方も多いのではないだろうか。
 本分科会では、即時オープンアクセスに最低限対応するために、具体的に何が求められており、リポジトリ登録業務にどのような影響があるのかを、小規模機関の事例を伺いながら考えていきたい。即時オープンアクセスに対応するために図書館員として知っておきたい基礎知識も併せて紹介する予定のため、即時オープンアクセスに詳しくない方にも気軽にご参加いただきたい。

担当:
柿原 友紀(熊本大学附属図書館)
楫  幸子(安田女子大学図書館)


第3分科会:キャリア形成 「図書館員の教育実践とキャリア形成」

 大学図書館の業務では、図書館主催の講習会や館内説明会など、教育的な役割を果たす場面が多く見られます。また、情報リテラシー教育や授業支援に加え、非常勤講師として授業を担当する図書館員も増えています。
 本分科会では、教育活動の経験を持つ発表者に、教える際の工夫やコツ、教育経験が他の業務や自身のキャリア形成にどのような影響を与えたのかについて話題提供していただきます。参加者同士の情報共有やディスカッションを通じて、「教えること」が図書館員としての専門性や成長にどのように寄与するのかを考える機会とします。
館内研修、情報リテラシー教育、学内授業に関わる図書館員の方、非常勤講師の経験がある方やこれから目指す方、教育活動を通じて自身のキャリアを深めたい方など、幅広い皆さまのご参加をお待ちしています。

担当:
中川 恵理子(金沢学院大学)
德田 恵里  (大阪芸術大学)


9月14日(日)14:00~16:30


第4分科会:利用者支援 「教員との連携による効果的な図書館サービスを目指して」

 図書館サービスを効果的に進めるうえで、教員との連携は大きなキーポイントである。例えば教育面においては、教員と図書館職員の協力による授業組み立て、教員・学生のニーズに沿った選書など、リソース面での効果的な支援が見込まれよう。また、研究面では、教員の研究活動(論文公開や資料入手等)に図書館が関与することで、図書館職員と教員との情報共有がなされ、質の高い図書館サービスにつながる可能性がある。
 本分科会では、教員との連携を強化し、図書館サービスの向上を目指すための具体的な事例紹介やディスカッションを行いたい。ディスカッションにおいては、館種や規模を跨いだ参加者同士で、幅広い教員との連携事例を紹介しあい、情報共有を行うなかで、参加者各自に今後の図書館サービス向上へつながるきっかけを得ていただければと考える。

担当:
諏訪 有香(高知学園大学高知学園短期大学図書館)
中筋 知恵(小樽商科大学附属図書館)



第5分科会:大学図書館史 「大学図書館問題研究会の歴史を見るPart9」

 大学図書館研究会(大図研)では現在、五十周年記念事業記念出版物の編集を進めている。この出版物では大図研50年の歴史をまとめる予定で大学図書館史分科会も資料提供等で協力している。今年今年大幅にメンバーが追加された五十周年記念事業記念出版物編集委員会(以下、編集委員会)により記念出版物の構成が固まり編集作業も進みつつある。今回の大学図書館史分科会では編集委員会の状況と記念出版物の進捗状況を編集委員会から伺い、その歴史を掘り下げ大図研の歴史継承について意見交換していきたい。
 大学図書館史に関心を有する方やこれまでの歴史から現在を捉え直したい方などの参加を期待しており、大学図書館史を学び合う機会としたい。

担当:
加藤 晃一(千葉大学附属図書館)
長坂 和茂(京都大学法学部図書室)


第6分科会:出版・流通 「書店と図書館の関係を考える~大学図書館の場合~」

 書店の減少が社会問題となっている。一般社団法人日本出版インフラセンターの調査によると、2014年から2024年館で全国の書店数は約3割減少している。
 この問題に対し、日本図書館協会では一般社団法人出版文化産業振興財団、文部科学省総合教育政策局地域学習推進課とともに「書店・図書館等関係者における対話の場」を2024年に開催した。その後も、図書館と書店の関係についてはいくつかの図書館関連団体において議論されている。
 大学図書館の場合、学内の書店、あるいは(例えば洋書や専門書など)街中の書店では扱わない資料を取り扱う書店との取引などと特有の事情があるため、公共図書館や学校図書館など他の館種とは書店(特に地域にある一般的な書店)との関係性は異なると思われる。
 その一方で、大学の学生や教職員が地域の書店の顧客となることもある。  この分科会では、大学図書館と書店全般・および地域の書店の関係についての現状を取り上げ、書店と図書館を取り巻く問題に何が貢献できるのかについて考える。

担当:
下山 朋幸
有馬 良一(神戸大学附属図書館)