分科会について

9月14日(日)9:30~12:00


第1分科会:資料保存 「これからのカビ害対策を考える」

【趣旨】
 資料の燻蒸ガスとして広く使われてきたエキヒュームSの販売が2025年3月に終了した。関東地域には殺カビ効果のある別の燻蒸ガスを扱う業者も存在するが、取扱い可能な業者や地域が限られることから、燻蒸による殺カビ処理という手段は今後取りづらくなるだろう。そのため、これからのカビ害対策としては、文化財IPMの考え方に基づく生物被害対策(温湿度管理と清掃などによる予防)がますます重要になると考えられる。しかし一方で、限られた人員での対応に困難を感じている担当者も多いのではないだろうか。本分科会では、参加者の所属館での課題や事例、知見を共有し合いながら、生物被害対策を実践していくために具体的にどうしていけばよいかを一緒に考える機会としたい。

【内容】
 本分科会では、参加者への事前アンケート結果をもとに主に下記について情報共有や意見交換を行う。なお、参加にあたっては参考資料に目を通していただくことが望ましい。

【担当】
和知  剛(安来市立やすぎ図書館)
吉田 弥生(大阪大学附属図書館)

【参考資料】
  1. 木川りか, 間渕創, 佐野千絵. 文化財展示収蔵施設におけるカビのコントロールについて. 東京文化財研究所文化遺産国際協力センター. 2010-03-31.
    https://www.tobunken.go.jp/japanese/ipm-list/com/com-j/files/downloads/com-j.pdf.
  2. 国立国会図書館. "温湿度管理".
    https://www.ndl.go.jp/jp/preservation/collectioncare/humiditycontrol.html.
  3. 佐藤嘉則. ポスト・エキヒュームSを見据えた資料の生物被害対策. ネットワーク資料保存, 2024, 136, p.1-3.
    https://www.jla.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/04/NW136.pdf.
  4. 能勢美紀. 資料を守るライブラリアン─省エネしつつ、カビを防ぐ. ライブラリアン・コラム. アジア経済研究所. 2025-02.
    https://www.ide.go.jp/Japanese/Library/Column/2025/0217.html.
  5. フォーラム「ポスト・エキヒュームS の資料保存を考える. 東京文化財研究所.
    https://www.tobunken.go.jp/ccr/pest-search/2025forum/2025forum_online.html.


第2分科会:学術情報基盤 「小規模機関リポジトリの効率的な運用を探る」

【趣旨】
 科研費等による研究成果の即時オープンアクセスが2025年度新規公募分から義務化されることへの対応は、多くの機関で課題となっている。機関リポジトリに紀要論文を中心に登録してきた機関は、新たに国内外の学術雑誌に掲載された論文を収録することが求められる。その際、出版社の著作権ポリシーの確認や、研究データの登録など新たな業務に直面することが予想される。一方、研修などで取り上げられる海外の事例や、高度な知識やシステム改修が前提となるような事例は、ハードルが高いと感じる方も多いのではないだろうか。
 本分科会では、即時オープンアクセスに最低限対応するために、具体的に何が求められており、リポジトリ登録業務にどのような影響があるのかを、小規模機関の事例を伺いながら考えていきたい。即時オープンアクセスに対応するために図書館員として知っておきたい基礎知識も併せて紹介する。

【内容】
  はじめに、即時オープンアクセスに関する基礎知識を共有したのち、実際にリポジトリ業務に携わっている方々による事例報告を予定している。その後はグループに分かれて日頃の課題や今後の対応策などの意見交換をおこない、リポジトリのより効率的な運用方法を探っていきたい。

【担当】
柿原 友紀(熊本大学附属図書館)
楫  幸子(安田女子大学図書館)


第3分科会:キャリア形成 「図書館員の教育実践とキャリア形成」

【趣旨】
 大学図書館の業務において、図書館主催の講習会や館内説明会など、教育的な役割を果たす場面が多く見られます。また、情報リテラシー教育や授業支援に加え、講師として授業を担当する図書館員も増えており、教育活動はますます多様化しています。
 本分科会では、「教えること」が図書館員の専門性やキャリアの形成にどのような意味を持つのかを考えます。教育活動を通じて得られる経験を参加者同士で共有し、今後の実践やキャリアにどのように活かすことができるのか探っていきます。
 館内研修、情報リテラシー教育、学内授業に関わる図書館員の方、講師の経験がある方やこれから目指す方、教育活動を通じて自身のキャリアを深めたい方など、多様な立場の参加者が実践や課題を共有しながら、「教えること」が図書館員のキャリアや専門性にどのような広がりをもたらすのかを考える場とします。

【内容】
 本分科会では、教育経験をもつ担当者が、教える際に工夫した点や、教育実践が他の業務や自身のキャリア形成にどのような影響を与えたのかについて、具体的な事例を交えて発表を行います。
 その後、参加者同士での情報共有や質疑応答、意見交換の時間を設け、図書館員の教育活動について多角的に考えていきます。

<発表>
中川恵理子「図書館員の専門性と教育実践─「教えること」がもたらす成長と可能性─」
德田恵里「非公式の“教え合い”から始めた教育活動─ある図書館員のキャリア再構築─」

【担当】
中川 恵理子(金沢学院大学)
德田 恵里  (大阪芸術大学)


9月14日(日)14:00~16:30


第4分科会:利用者支援 「教員との連携による効果的な図書館サービスを目指して」

【趣旨】
 大学図書館における教員や学内関係者との連携は、教育・研究支援の質を高めるうえで重要な要素である。本分科会では、現場で実践されている多様な連携の事例を共有し、参加者同士が自館での取り組みのヒントを得ることを目的とする。日々の業務の中で「連携を進めたいが、どこから始めればよいか分からない」と感じている図書館員にとって、第一歩を踏み出すきっかけとなる場を提供する。

【内容】
 分科会は以下の構成で進行する。
 冒頭のオープニングでは、開会挨拶と趣旨説明を行い、参加者の簡単な自己紹介を通じてアイスブレイクを図る。
 次に、事例報告として、学習・教育支援(小樽商科大学附属図書館・企画展示やゼミ活動支援)、研究支援(東邦大学医学メディアセンター・研究データ管理)、学部・学科との共同プロジェクト(高知学園短期大学図書館・認定絵本士養成講座)など、異なる切り口からの連携事例を紹介する。各報告は10分のプレゼンテーションと10分の質疑応答で構成される。
 続くディスカッションでは、「自館でできる教員連携の第一歩」をテーマに、参加者同士で意見交換を行う。連携状況や課題、教員との関係構築の工夫、今後取り組みたいアイデアなどを共有し、実践につながるヒントを探る。参加者数に応じて柔軟に進行方法を調整する。
 最後に、全体共有として各グループまたは個人からの発表と、進行役によるまとめを通じて、分科会全体の学びを振り返り、今後の実践への提言を行う。
 クロージングでは、アンケート記入(必要に応じて実施)と閉会挨拶を行い、分科会を締めくくる。

【担当】
諏訪 有香(高知学園大学高知学園短期大学図書館)
中筋 知恵(小樽商科大学附属図書館)



第5分科会:大学図書館史 「大学図書館問題研究会の歴史を見るPart9」

【趣旨】
 今回も大学図書館研究会(大図研、旧大学図書館問題研究会)の50年に渡る活動を振り返り、大図研及び大学図書館における主要な歴史を共有する。

【内容】
 大学図書館研究会(大図研)では現在、五十周年記念事業記念出版物の編集を進めている。この出版物では大図研50年の歴史をまとめる予定で大学図書館史分科会も資料提供等で協力している。今年大幅にメンバーが追加された五十周年記念事業記念出版物編集委員会(以下、編集委員会)により記念出版物の構成が固まり編集作業も進みつつある。今回の大学図書館史分科会では編集委員会の状況と記念出版物の進捗状況を編集委員会から伺うとともに、支部・地域グループにも着目し、その歴史を掘り下げ大図研の歴史継承について意見交換していきたい。
 大学図書館史に関心を有する方やこれまでの歴史から現在を捉え直したい方などの参加を期待しており,大学図書館史を学び合う機会としたい。

【担当】
加藤 晃一(千葉大学附属図書館)
長坂 和茂(京都大学法学部図書室)


第6分科会:出版・流通 「書店と図書館の関係を考える~大学図書館の場合~」

【趣旨】
 書店の減少が社会問題となっている。一般社団法人日本出版インフラセンターの調査によると、2014年から2024年の間で全国の書店数は約3割減少している。この問題に対し、日本図書館協会では一般社団法人出版文化産業振興財団、文部科学省総合教育政策局地域学習推進課とともに「書店・図書館等関係者における対話の場」を2024年に開催した。その後も、書店と図書館の関係についてはいくつかの図書館関連団体において議論されている。例えば、2025年3月に開催された日本図書館研究会第66回研究大会のシンポジウムでは、書店・公共図書館・学校図書館・文部科学省の立場からの発表および討論が行われた。
 だが、これらの書店と図書館の関係の議論における「図書館」とは公共図書館・あるいは学校図書館を指すことがほとんどであり、書店と「大学図書館」の関係については議論がされてこなかった。理由としては、大学図書館の場合は地域の一般書店よりも学内書店・あるいは洋書や専門書などを取り扱う書店との取引などと特有の事情があるため、書店との関連性は公共図書館や学校図書館など他の館種と異なると思われる。その一方で、大学の学生や教職員が地域の書店の顧客となることもあり、また大学図書館も出版・流通を支える重要な存在であるといえよう。
 この分科会では、書店と図書館を取り巻く問題について大学図書館は何が貢献できるのか、また出版・流通に関わる立場の人間として何ができるのかを考えることを目的とする。

【内容】
 担当からの趣旨説明、および嶋田学氏(京都橘大学)より書店と図書館を取り巻く現況について説明を行う。その後、書店の関係者より自社の取り組みなどについてお話をいただく予定である。また、大学図書館の側を対象として行うアンケートの結果を発表する。
 そして、後半は参加者間でグループワークとして、書店と大学図書館・また図書館全般との今後の関係のあり方について意見交換を行う予定である。
 ※内容については変更となる場合がある。変更があった場合随時Web サイトにて掲載する。

【担当】:
下山 朋幸
有馬 良一(神戸大学附属図書館)